1997年リリース
寺田町GROUP.CDアルバム
「人魚に恋した男の歌」

[収録曲] 
【1】 Theme〜天幕小屋に灯がともる〜
【2】 借金だらけの王様
【3】 夏はもういっちまった
【4】 アナログレコードのブルース
【5】 ある季節に
【6】 あいつの口癖
【7】 夜はやさし
【8】 人魚に恋した男の歌
【9】 ウェイトレスソング


[1] Themeー天幕小屋に灯がともるー

[2] 借金だらけの王様

借金だらけの王様
袋小路で泣いてる
メッキのはげた王冠
そろそろ質入れ時だ

かつての家来は表通り
えらくはぶりがいいそうじゃないか
あんたが与えた勲章を
誇らしげに胸に付けてる

借金だらけの王様
こっちにきて酒でも呑みな
ここじゃあんたが誰でも
気にしたりはしないぜ

そうさ一杯 どうだい
そうさ一杯 どうだい

借金だらけの王様
泣き言はもう聞き飽きたぜ
ふしあわせの自慢話じゃ
ここでは勝ち目はないぜ

あんたのために立てられた
銅像も今はない
札ビラに刷り込まれた
顔はあんたの知らないヤツさ

借金だらけの王様
こっちに来て酒でも呑みな
ここじゃあんたが誰でも
気にしたりはしないぜ

そうさ一杯 どうだい
そうさ一杯どうだい


[3] 夏はもういっちまった

凍てついたロマンスを抱え
忘却の浜辺にたたずめば
鉛色の空の下で
ウミネコとカモメの合唱

「夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった 早くお帰り」

ひび割れたくちびるにひとりごと
あれはいつの日の恋だろうか
劇場の扉も閉まり
そして若くないコーラスガールの歌が

「夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった 早くお帰り」

いつの間に陽射しはこんなに
傾いてしまったのだろうか
吹く風の色も違う
俺は野良犬のように歌う

「夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった
 夏はもういっちまった 早くお帰り」


[4] アナログレコードのブルース

黒く平たいお皿から
大抵のことなら教わった
キスにダンスにさすらいに
上手いやり方以外なら

プチ プチ プチ プチ プチと

黒い平たいお皿から
大抵のことなら教わった
33に45
それに78の歌

プチ プチ プチ プチと

黒い平たいお皿から
大抵のことなら教わった
ふられた気持ちの捨て場所や
星くずなんかの拾い方

プチ プチ プチ プチと


[5] ある季節に

ひとつの季節が
長い髪ひるがえし
次の角を曲がると
その影もない

新しい季節は
赤い帽子にマフラー
黒いコートをまとって
風を運んできた

扉を開けると
街の灯がまぶしい
夜明けの風なのになぜか
朝の匂いが

ひとつの季節が
残していったものは
セピアの風景
手つかずの夢

新しい季節は
うたかたの夢か
煙草をくゆらせ
窓辺にたたずむ

扉を開けると
街の灯がまぶしい
夜明けの風なのになぜか
朝の匂いが


[6] あいつの口癖

黄ばんだデコラのテーブル
ところどころはがれてる
がたが来てる丸イスの
雨ガエル色のビニール
俺はポケットの中の
小銭をジャラつかせ
ビールグラスといっしょに
あいつを待ってる

あいつの口癖は
「靴だけは磨いておけ
 物語は終らない
 主人公が死ぬまでは」

AMラジオが流す
時代錯誤のメロディー
グラス片手にじいさん
昔流行りのソフト
しわだらけのその顔に
薄茶の目が光る
俺はビールといっしょに
あいつを待ってる

あいつの口癖は
「靴だけは磨いておけ
 物語は終らない
 主人公が死ぬまでは」

くすんだ壁に不似合いな
ビキニの女のカレンダー
毎年酒屋が配る
ウィスキーの広告さ
だけど一年ごとに
水着が小さくなってく
俺はビールといっしょに
あいつを待ってる

あいつの口癖は
「靴だけは磨いておけ
 物語は終らない
 主人公が死ぬまでは」


[7] 夜はやさし

ペンキのはげた回転木馬じゃ
どこへも行けないって言われたんだろ
泣くことないよ こっちへおいで
お前の髪 まるでたてがみみたいだぜ

青くさい夢に紫を少し
お前 街のボヘミアン
文無しだけど手を組まないか
俺は嘘の下手なペテン師

夜はやさし ネオンさえも
月影踊るざわめきの中
酒が流れ 歌が弾ける
恋におちる一瞬

ロックグラスにビールの空き缶
夜を味方につけるのさ
俺の首にお前のスカーフ
お前には俺の帽子がよく似合う

今度こそはうまくやるのさ
俺の合図 見逃すなよ
片手に運 片手に愛を
なかなかいいコンビさ 俺たち

夜はやさし ネオンさえも
月影踊るざわめきの中
酒が流れ 歌が弾ける
恋におちる一瞬

沢山の窓に灯りがともる
俺たち 帰る場所もないのに
指と指をからませながら
この街の陰にたたずむ

流れ星の降るその夜に
ふたり 同じ夢を見たよ
ペンキのはげた回転木馬が
俺たちを迎えに来てくれる

夜はやさし ネオンさえも
月影踊るざわめきの中
酒が流れ 歌が弾ける
恋におちる一瞬


[8] 人魚に恋した男の歌

澄んだ水の中から
そいつは来たという
尾ひれを長い足に
乳房をTシャツに隠し

都会の夏の初めの
どろりとした空気の中
それは夜の魔法なのか
人魚に恋するなんて

擦りガラスの向こうに
踊る影は泳ぐよう
そこは大きな河だろうか
それとも波の寄せる 浜辺か

だけど銀幕引き裂く
タイヤのきしみ クラクション
それでも胸に残る
濡れた髪の香り

ネオンサインに恋した
人魚の気まぐれな
やさしさに抱かれた
まぬけな男の 夢に

しばし付き合っておくれよ
夜の天使たち
夜明けのスミレ色
光が射すまで

気が付かなかった
いつか波が呼んでたんだ
いつか月が引きよせて
季節が来たんだ 別れの

星はめぐりめぐり
スモッグの空にも
浜辺に打ち寄せられた
がらくたと思い出


[9] ウェイトレスソング

青いユニフォームに
白いエプロンがよく似合うじゃないか
ビールにはまだ早い
まずはコーヒーを
いや、ミルクも砂糖も だからスプーンもいらない
君がそばに立っていてくれたらいい
歌うように「いらっしゃいませ」と
君が言うのを聴いていたいんだ

あのいつものカウンターのじいさんにはやさしくな
君は言う
「わかってるは、先週、事故で逝っちゃったあの娘のことはよく知ってるわ」って
君のひまわりの微笑み
きっと慰めになるよ
君がそばに立っていてあげたらいい
歌うように「いらっしゃいませ」と
君が言うのを聴かせてやりなよ

君がグラスを落っことしたって
オーダーを間違えたって
誰も怒ったりしないよ
冗談とばすだけ
君はタクシードライバーの天使
トラック野郎の女神
あらくれたちのうわさの的
みんな言ってたよ
歌うように「いらっしゃいませ」と
君が言うのを聴いていたいって

歌うように「いらっしゃいませ」と
君が言うのを聴いていたいんだ
そうさ毎日だって

古臭いレジスターの音が
バックグラウンドミュージック...