1994年リリース
寺田町GROUP.ライブアルバム
「スカラムーシュ」

[収録曲] 
 【1】 電話ボックス
 【2】 スカラムーシュ
 【3】 夜が帽子を目深にかぶる
 【4】 飲みにいかないか
 【5】 バーディ
 【6】 メンバー紹介
 【7】 月下狂詩曲
 【8】 ママのランチととびっきりの夜のシャンソン
 【9】 北斗七星の歌
【10】 チンピラ
【11】 夜を泳ぐ魚


[1] 電話ボックス

失われてしまったものたちが
「忘れないで」と叫ぶ声が
スクランブル交差点で
雑音にまぎれちまう

夜も更けたこの時刻
まだ帰れない人の群れる駅で
テレホンカード握りしめ俺は
遠いお前求めてる

ここにいるか出ていくか
カードはたった二枚だけ
残されるか逃げ出すか
ゲームのような街暮らし

重く垂れこめた空の下で
錆び付き掛けた俺の心にゃ
夜毎の酒とブルースと
お前が必要さ

色とりどりに誘いを掛ける
切り売りの色事商売
よりどりみどりって事は結局
砂漠で見る蜃気楼

電話ボックスは人でいっぱい
助け求める避難民のようさ
俺の声が聴こえるかい
「あの場所でおち合おう」


[2] スカラムーシュ

ショーははねたよ
狭い楽屋のくたびれたソファーに
ネクタイをゆるめひっくりかえると
酒を一杯

煙草で煙る楽屋の
そこだけピカピカに磨かれた
鏡の中に写る
しぼりきったダスターみたいな顔

スカラムーシュさ
ピエロとも言う
道化ってやつかな
ただのおかしな男

今日のステージはけっこう受けてたぜ
シルクハットいっぱい
拍手としおれたバラの花びら

あの娘は舞台の袖で待ってくれてる
すぐにでも抱きしめたいのに
がまんしてるのはかっこつけてるのさ

スカラムーシュさ
ピエロとも言う
道化ってやつかな
ただのおかしな男

ゆうべ見た夢
サーカスの綱渡り
細いロープの上を
あぶなっかしく渡って行くのさ

もしも落ちたら
待っててくれるだろか
ヴェルベットのソファー
いや、わらを敷きつめたベット

スカラムーシュさ
ピエロとも言う
道化ってやつかな
ただのおかしな男


[3] 夜が帽子を目深にかぶる

夜が帽子を目深にかぶる
大きな街はどこもにたようなものさ
だからよけいに一人がわかる
旅の空の下お前を思う

知らない街の露地裏だけど
お前と飲み歩いたあの道に似てる
だからよけいに一人がわかる
旅の空の下お前を思う

ジャズの音
どこからか流れてくるよ
お前がまるでそばにいるように
甘く激しいメロディー

あの日 夜のコートをまとい
銀の揚羽蝶の指輪をしてた
お前の笑顔 今も目に浮かぶ
旅の空の下お前を思う

電話がなんて素敵に見える
お前の声が聴けると思うと
だからよけいに一人がわかる
旅の空の下お前を思う

ジャズの音
どこからか流れてくるよ
お前がまるでそばにいるように
甘く激しいメロディー

夜がブーツのファスナーを降ろす
知らない街にもチャンと朝は来る
だからよけいに一人がわかる
旅の空の下お前を思う


[4] 飲みにいかないか

気のきいた言い方なんて
ただの一言も思い浮かばない
だけどあいつにちょっとちょっと会いたい
受話器とりあげ出てくるセリフは
ぶっきらぼうなこんな一言さ
「飲みにいかないか
 飲みにいかないか
 飲みにいかないか ちょっと」

賢いなんてとても言えないぜ
野望も才能もチャンスもない
だけどあいつにちょっと会えたなら
しけた話しばかりじゃないさ
まずは手始めにこんな一言を
「飲みにいかないか
 飲みにいかないか
 飲みにいかないか ちょっと」

夕陽が看護婦みたいに
やさしく微笑む頃
良い子はうちに帰る時間
俺は出かける時間
ビールを飲みに

貸せるほどの金なんか持ってないが
惨めになるにはまだ早い
だからあいつにちょっと会いに行こう
なじみの店ならなおさらいいさ
そうさこれが俺たちのブルース
「飲みにいかないか
 飲みにいかないか
 飲みにいかないか ちょっと」


[5] バーディ

バーディ
俺たちは鳥のように飛べたはず
なのになんてことだ
これじゃどこにも出られない
バーディ
言ってくれよ
脱け出す道があるんだと
今じゃ食い物の味も毎日同じこと

灰色の壁と鉄の扉
お前の笑顔 俺は待つ

バーディ
俺たちは緑の中からかり出され
他人の戦いでいちばん前へと押しやられ
バーディ
こんなざまだ
息があるのが不思議だぜ
おまけに
誰かさんのおかげと感謝しろだとさ

お笑いぐさの殺人ゲーム
空飛ぶ鳥が笑ってる

バーディ
俺たちはあやつり人形だったのか
糸が切れたとき
こんなところに捨てられた
バーディ
何か言えよ
俺を一人にする気かい
ここから出ていこう
鳥のようには飛べないが

俺たちは負けたわけじゃない
ちぎれた翼は捨てていこう


[6] メンバー紹介


[7] 月下狂詩曲

ビルの向こう側に
砂漠が広がる
夜の灯りがあたりを浸す頃

黒に近い青の
空をよぎる影
あれはこうもりか
でなきゃ魔女の生き残り

オートバイにまたがる
大きな月が
この街の真上で
俺たちに笑いかける

ピンクのピストルを
お前は俺に向け
夜のまんなかで
俺の胸を撃った

ビルの向こう側に
広がる あれは海
耳を澄ませれば
人魚が歌ってる

赤と白のワイン
薄い黄色のペルノー
飲み干すそのときに
グラスを打ち鳴らせ

夜空に無数の
穴があいちまった
銀紙みたいな星が
俺たちに降りそそぐ

ピンクのサキソホン
お前は俺に向け
夢のまんなかで
俺に吹き鳴らす


[8] ママのランチととびっきりの夜のシャンソン

あのいかしたバンド
「キャバレー」って言ったっけ ママ
ピアノの横のレンガの壁に
今も名前あるね きっと

土曜のショーはたいていよかった
満員の店の汚い床に
ビール瓶ところせましと並び
アンコールの頃にはそうさ
ママのダンスも見れたよ

会いにいくよ
久しぶりに
ワインとギター持って

ママのランチと
とびっきりの夜のシャンソン

地下に降りる湿った改段
はずれかけた扉
太い声でブルースをうなる
時代物のでかいクーラー

そんなものがいつも迎えてくれた
うずく気持ちと乾いた心
そいつが招待状の代わり
くつひもちぎれ雨に打たれても
ママの笑顔は見れたよ

会いにいくよ
久しぶりに
ワインとギター持って

ママのランチと
とびっきりの夜のシャンソン

歌は終わり
舞台セットも変わり
役者達は着替え メークも落とし
死んだやつはやがて思い出に変わり
ただっ広いからっぽのホール
でもまだ響き止まぬメロディー
ママ
会いに行くよ
久しぶりに
ワインとギター持って

ママのランチと
とびっきりの夜のシャンソン


[9] 北斗七星の歌

初めみんなは
俺が酔ってると思ったらしい
でも違うんだ
こんなマジになったことってないぜ
北斗七星に誓ったっていい

まるで15のガキみたいだ
お前のことしか目に入らない
お前の笑顔見れるものなら
銀行強盗だってやってやるぜ

夜明けまで起きていよう
だって
これは特別な夜だから
お前をつつむ甘いラムの香り
そして紫の光まとい
やがてお前は眠るのさ

ロックンロールと煙草と酒の
ありふれた夜のひとつだった
最初はそうさ 何気なかった
確かにいい女だとは思ったけど

耳もとでお前がささやいたのは
ざわめきとエレキギターに負けないためで
それほど意味があったわけじゃない
だけどそのとき夜が色を変えた

夜明けまで起きていよう
だって
これは特別な夜だから
お前をつつむ甘いラムネの香り
そして紫の光まとい
やがてお前は眠るのさ

初めみんなは
俺が酔ってると思ったらしい
でも違うんだ
こんなにマジになったことってないぜ
北斗七星にちかったっていい


[10] チンピラ

使い古された夢
ねじの切れてる古時計
アスファルトを渡る風
ごちゃまぜの街の匂い

壊れたジュークボックス
捨てられるのを待ってる
雨に打たれる前に
盗んでどこへ逃げよう

捨て猫の濡れた眼ざしを
ふりきれぬ
とるに足らないチンピラ

どしゃ降りの雨の中
カーニバルへと急ぐ
俺達の難破船
街の迷路うろうろ

お前のストッキング
破れてたって構わない
お前は笑ってるし
俺はお前に触っていられる

お前「夢で会えたら嬉しいね」って
そんな一言で
酔っぱらえるチンピラ

やがて満月のメダル
スモッグ越しに昇る
あれはなんにももたない
俺達の勲章なのさ

きどった街のルージュ
アルコールでふき取って
荒れたその唇に
無理矢理キスをするのさ

風喰らい
真夜中の底で
夢紡ぐ
ロマンチストのチンピラ


[11] 夜を泳ぐ魚

とても細かいけど
ぐっしょり濡れちまう雨に
ヘッドライトがよりそい
イルミネーションがくちづけ

これっぽっちの雨じゃ
洗い流せっこない汚れた街に
それでも俺たちは
今夜また出ていく

俺たちゃ夜を泳ぐ魚
背びれにネオンのしぶきを浴びて
俺たちゃ夜を泳ぐ魚
月にキラリと光るナイフのような

酒が交わした約束
一夜かぎりの恋は
スポーツ新聞の見出しみたいに
あてにもならない

だけどあの娘は本物さ
酔ってたってわかる
「今夜は帰らないで」と
俺にささやいた

俺たちゃ夜を泳ぐ魚
背びれにネオンのしぶきを浴びて
俺たちゃ夜を泳ぐ魚
月にキラリと光るナイフのような

街灯の下の水たまり
鏡みたいに光る
通り過ぎるタクシーが
それをこなごなにくだく

入り口があって出口のない街
それは嘘だと言っておくれ
「忘れないで あたしのこと」
あの娘は俺の手を握る

俺たちゃ夜を泳ぐ魚
背びれにネオンのしぶきを浴びて
俺たちゃ夜を泳ぐ魚
月にキラリと光るナイフのように