2003年3月リリース
寺田町弾き語りアルバム
「寺田町.SONG.BOOK」
[収録曲]
【1】 公園には捨て猫
【2】 雪国からの手紙
【3】 夜のスナップ
【4】 お前の夢の中に
【5】 酔いどれの小さな夢
【6】 月の庭
【7】 いつも何度でも
【8】 IRINAKA SONG
[1・
公園には捨て猫
]
あの頃はさ
ほんとに出口なんかなくて
その日に呑めるビールだって
奇跡のようなもんだった
ギターがあって歌があって
公園には捨て猫
俺のパン屑に寄ってきた
にゃーにゃーにゃーにゃー...って
俺も泣きたかったよ ほんとはね
愛だなんて軽く言うな 彼女は死んで
いつも散らかってた
あの部屋さえも
今ではとても懐かしい
ギターがあって歌があって
公園には捨て猫
にゃーにゃーにゃーにゃー...って
俺も泣きたかったよ ほんとはね
ピザハウスじゃ
みんな女の子に夢中で
しわがれ声の俺の歌なんて
誰も聞いちゃいなかった
ギターがあって歌があって
公園には捨て猫
にゃーにゃーにゃーにゃー...って
俺も泣きたかったよ ほんとはね
ふり出しはさあ
俺が主人公の筈だったのに
気がつきゃ俺は分の悪い脇役
まあたいていのやつはそうなんだけど
ギターがあって歌があって
公園には捨て猫
にゃーにゃーにゃーにゃー...って
俺も泣きたかったよ ほんとはね
[2・
雪国からの手紙
]
「曇り空ばかり冬は」と
手紙であの娘は言うんだ
俺の知らない北の街
「冬は雪の山を見つめて過ごすんだ」と
雪と重たい雲に閉ざされた
冬のその街を思ってみると
あの娘の顔が浮かばない
あの娘のきらめく瞳が
「赤毛のアンみたいにロマンスを失わないんだ」って
スカートを翻し
色んな街へ街へと
あの娘は思いを抱いてゆくのさ
「あの雪山を越えてゆくの」と
手紙であの娘は言うんだ
春を待つあの娘は
春を迎えにゆくのさ
[3・
夜のスナップ
]
気がついてみると
寝静まる裏通り
お前は少し酔って
靴を脱ぎ捨てダンス
わずかばかりの星が
音もたてずに拍手
またはみ出してしまったようだね
それでもいいと お前は微笑む
3年ばかり前までここら辺りは
イタリア映画の下町みたいな
古いアパートがあったのにと
白いコンクリート見上げ お前は悔しそうに
またはみ出してしまったようだね
それでもいいと お前は微笑む
飼い主を待ってる
シェパードみたいなオートバイ
シートに腰をあずけて
お前は俺を誘う
夜の砂漠で出会った
ジプシー娘のように
またはみ出してしまったようだね
それでもいいと お前は微笑む
[4・
お前の夢の中に
]
鉛の空と足もと這い上がってくる寒さ
こんな2月のいやな午後に
うつむいてしまうのは簡単だけど
お前の夢の中に 俺を入れてくれないか
俺の夢に入っておいで 少しだけでいい
都会の朝のゴミ袋に
群がるカラスたちの歌
台所のゴキブリの歌も聴いたよ
俺が歌って悪いわけなんてないだろ?
お前の夢の中に 俺を入れてくれないか
俺の夢に入っておいで 少しだけでいい
ピストルがあるなら握らせておくれ
ピアノがあるなら叩かせておくれ
ピンボールのようなこの人生に
ピエロがいなけりゃ俺がなってやるよ
お前の夢の中に 俺を入れてくれないか
俺の夢に入っておいで 少しだけでいい
久しぶりに手紙を書くよ
こんなひとりの夜も悪くないさ
宛名は去年の春のタンポポに
でなけりゃグラスに映った俺自身に
お前の夢の中に 俺を入れてくれないか
俺の夢に入っておいで 少しだけでいい
[5・
酔いどれの小さな夢
]
少し欠けた月がピカピカに俺を照らす
酔っぱらわないうちにあの娘の店に行こう
よく似た店が1ダースは並んでるから
気をつけないと間違うぜ まして酔ってれば
運がよければあの娘に会える
22時頃なら話しもできるかも
俺は少し前かがみ
君は少しつま先立って
唇を重ねる
そんな夢を見ながら グラスを傾ければ
今日もまんざら捨てたもんじゃない
込み合う店の中はさっきよりも賑やかに
酒でいえばそうさひとりビール2本ほど
あの娘は長い髪をひとつにまとめ
ピーターラビットみたいに
テーブルからテーブルへ
俺は少し前かがみ
君は少しつま先立って
唇を重ねる
そんな夢を見ながら グラスを傾ければ
今日もまんざら捨てたもんじゃない
あの娘の分けてくれた笑顔をポケットに
酔いどれた俺は名前も聞けずじまい
俺は少し前かがみ
君は少しつま先立って
唇を重ねる
そんな夢を見ながら グラスを傾ければ
今日もまんざら捨てたもんじゃない
[6・
月の庭
]
月の庭で俺たちは踊る
細い露地を通りぬけて
たどり着けば心も踊る
丘の上で見つけた花を
摘むこともせず胸にしまった
悲しいような うれしいような
春の日の開けゆく空
夏の日の宵闇に星
秋の日の黄昏れ時
冬の陽だまり
はるか彼方につづく道を
目の前にして一人たたずめば
月の光がそっと舞い降りる
[7・
いつも何度でも
]
呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも心踊る 夢を見たい
かなしみは 数えきれないけれど
その向こうで きっとあなたに会える
繰り返すあやまちの そのだび ひとは
ただ青い空の 青さを知る
果てしなく 道は続いて見えるけれど
この両手は 光を抱ける
さよならのときの 静かな胸
ゼロにからだが 耳をすませる
生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんなおなじ
呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも何度でも 夢を描こう
かなしみの数を 言い尽くすより
同じくちびるで そっとうたおう
閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く
こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される
はじまりの朝の 静かな窓
ゼロになるからだ 充たされてゆけ
海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから
[8・
IRINAKA SONG
]
何を思い出させようっていうんだい
安っぽい夕焼け
時の流れにきらめくさざ波
よみがえるあの風 遠い街での話
何ひとつ知らない青二才だったから
お前だけといられたら それでよかった
ステンドグラス 柄にもない教会の夕暮れ
二人きり礼拝堂 マリア像が見てた
この一瞬を永遠に変えてくれるなら
神様だって何でも信じてやるよ
お前だけといられたら それでよかった
アイスクリームが大好物で
喫茶店でもおかわりしたよね
お前のしぐさひとつひとつ
見ているだけで幸せだった
手をつないで歩いた七夕の夜に
キッスなんてもちろん初めて
死んでもいいって思ったよ
お前だけといられたら それでよかった
何を思い出させようっていうんだい
安っぽい夕焼け
突然の秋風 さよならを運び
追いかけても季節は
扉を閉めて逃げていく
どうしようもないことだけど
信じたくなかったんだ
お前だけといられたら それでよかった