2005年5月リリース
寺田町ソロアルバム
【月にひまわり】

01 ムーンパレス
02 お前と出逢った夜
03 陽はまた昇る
04 見えないピアノの鍵盤
05 お前のまっすぐ伸びた背中
06 小さな物語
07 橋の上で
08 旅をつづけなくちゃ
09 ルチア
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01 [ムーンパレス(ルビーチューズデイを口ずさみながら)]

ムーンパレスのネオンが灯る
ビルとビルの隙間から
想いは募り 日々は過ぎてゆく
月は上り 陽は沈み

ルビーチューズデイ口ずさみながら
君は夜更けにコーヒーいれる

夜を隔て 街を隔て
それでも君に逢いにゆこう
地下鉄に乗って 闇を切り裂き
地上に出たら かけ出そう

ルビーチューズデイ口ずさみながら
君は夜更けにコーヒーいれる

月に吠える ネオンの狼
やせた喉に 歌が宿る 君は窓辺でそれを聴いてる
微笑みながら ミルをひきながら

ルビーチューズデイ口ずさみながら
君は夜更けにコーヒーいれる


02 [お前と出逢った夜]

たまたま月がきれいだったからじゃない
何年たっても忘れることはできないだろう
毎年必ず月が見えるんだ
お前と出逢ったその夜に

くじ運はまるでない方だから
分の悪い方にかけちまう俺さ
どうせ泣きを見ると知ってたんだ
お前と出逢ったその夜に

その夜が明けてゆくそのときに
悪くなることがあるなんて思えなかった
大都会のまぶしい それでも朝は
お前と出逢ったその夜から

そら見たことかと占い師は言うだろう
月を太陽が飲み込むと
それでも俺は微笑んでみせる
お前と出逢ったその夜のことを


03 [陽はまた昇る]

ブーゲンビリア ハイビスカス
場末のバーにゃ不似合いな絵だ
見つめている女の髪は
ぱさついてるが似合ってる

外へ出ればどうせ土砂降り
もう一杯飲んでいくか
グラスの底 希望のかけら
陽はまた昇る

アルコールの霧の中
影絵のように踊ってる
女の肌は荒れているが
俺には充分素敵過ぎる

外に出ればどうせ喧噪
もう一杯飲んでいくか
グラスの底 涙のかけら
陽はまた昇る

ボ−ン ボーン ボーン・・・
古い柱時計
ボ−ン ボーン ボーン・・・
アリバイを刻む

「ハ−ゲンダッツ食べたい」と
眠りに落ちる前のわがまま
店のソファは女のベッド
誰もじゃましはしない

外に出ればそろそろ夜明け
もう一杯飲んで行くか
グラスの底 光のかけら
陽はもう昇る

ボ−ン ボーン ボーン・・・
古い柱時計
ボ−ン ボーン ボーン・・・
アリバイを刻む


04 [見えないピアノの鍵盤]

つかもうとすると消え去る夢
明け方それはやって来て
たしかな手触りを残してゆく
見えないピアノの鍵盤のように

河のほとりにひとり立ち
ふたつの瞳を凝らして見る
流れのきらめき とどまる何かを
見えないピアノの鍵盤のような

歌い出す前のその口元
何故だか胸に焼きついているよ
ささやくように叫ぶように
見えないピアノの鍵盤のように

月のかけらを探しにゆくと
最後の電話 夜明け前の
耳に残るその声は
見えないピアノの鍵盤のようだ

つかもうとすると消え去る夢
明け方それはやって来て
たしかな手触りを残してゆく
見えないピアノの鍵盤のように


05 [お前のまっすぐ伸びた背中]

お前のまっすぐ伸びた背中が
とても好きだったよ 今でも目に浮かぶ
悲しいときこそ背筋を伸ばし
涼しいくちびるにはいつでも歌を

見たこともない色の夕焼けの下を
どこまでも歩いてゆけるような気がしてた
ひび割れたアスファルトさえも親しげに
あの想い それだけ信じていたのさ

遠くへ遠くへ俺たちを追いやる
時の流れにはさからえやしないけど
ここに この胸に陽だまりのように
消えない想いがたしかにあるのさ

お前のまっすぐ伸びた背中が
とても好きだったよ 励まされるようで
悲しいときこそ 微笑み浮かべ
明るいその声で歌い始める


06 [小さな物語]

河のほとり 夕暮れに
バスを降りて歩き出す
星が少し瞬いて
記憶のかけら甦る

いつかここで誰かといて
いつかここで別れたのか
あやうい光 街灯は
ただの男 照らし出す

小さな物語
どこにでもあるお話

「これから俺はどこへ行こう」
モノクロ映画の男のつぶやき
もはや寒い郊外の夜 家々の灯り テレビの声

たしかどこかで彼女といて
たしかどこかで別れたんだ
時代錯誤のマッチの炎
ただの男 照らし出す

小さな物語
どこにでもあるお話

最終バスの時間確かめ
ベンチに座り 酒を取り出す
遠慮がちに昇った月が
ただの男 照らし出す

小さな物語
どこにでもあるお話


07 [橋の上で]

どこからか口笛
川風に運ばれ
黄昏れの橋の上
お前を待っている

行き交う人の波
ネオンが灯り出す
約束もないまま
お前を待っている

頬なでる風
ここに俺はいる

いつからかこの街に
影を落としつづけて
コートの襟を立て
何かをよけながら

やせ我慢のあげくに
人ごみに一人立つ
そ知らぬ顔気取って
お前を待っている

頬なでる風
ここに俺はいる

どこからかサキソホン
川面を渡る風
あてなどないまま
お前を待っている

頬なでる風
ここに俺はいる


08 [旅をつづけなくちゃ]

古いホテルのくたびれたベッド
背骨は古代の生き物をたどり
眠れば誰かの夢を見せられる
でも旅をつづけなくちゃ

「夏は過ぎた」と誰かが歌う
恋人たちは海をあとにする
片足だけのビーチサンダル
でも旅をつづけなくちゃ

あのディスコの日々に君は踊る
誰とも違った素敵なステップを
俺はいつまでも見つめていたかった
でも旅をつづけなくちゃ

寝苦しい夜にあの娘の夢を見た
どこか懐かしい通りに立っていた
悲しそうなあの娘の微笑み
でも旅をつづけなくちゃ

あるとき突然 歌が聴こえて
目の前のものを投げ出してしまった
いつか後悔するんだろうか
でも旅をつづけなくちゃ

土砂降りの雨に足止め喰らってた
昼の日中の薄暗い待ち合い室
ストーブの炎 彼女を照らしてた
でも旅をつづけなくちゃ

焼けつくような陽射しが降り注ぐ
街はどこへも逃げ場が無いようだ
陽炎にゆらぐコンクリートジャングル
でも旅をつづけなくちゃ

一杯のビールが飲みたくて入った
店で偶然お前に出会ったんだ
一杯が二杯そして三杯に
でも旅をつづけなくちゃ

何人もの人と何冊もの本と
何枚ものレコード はきつぶした靴と
上着のポケットにゃ風がいっぱい
だから旅をつづけなくちゃ


09 [ルチア]

昔の夢 くすんだ夢
セピアの色に包まれ
今いちど もういちど
扉を開けてみたくなる

錆ついた鍵を捨てて
夕映えの中 踏み出せば
ハーモニカ横町に
懐かしい歌流れる

ルチア ルチア
くり返す夢の続きを
ルチア ルチア
今ここで見せておくれ

閉じられた映画館に
たたずんでいるのは誰だ
はがれかけたポスターの
中で微笑んでいるヒロイン

かつて見たヒーローの
原色のマントも色褪せ
露地裏でくだをまき
それでもサインをせがまれる

ルチア ルチア
くり返す夢の続きを
ルチア ルチア
今ここで見せておくれ

気がつけばこんなにも
遠くまで来てしまった
ふり返る街の灯は
何を語りかけてくるのだろう

ルチア ルチア
くり返す夢の続きを
ルチア ルチア
今ここで見せておくれ